2008.10.15 Wednesday
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2008.08.28 Thursday
04.水平線
妙なことになった、と骸は思った。 並盛高校に進学することが決まってから、一年もすれば沢田綱吉が入学していることは予見のできていたことだった。だが同じ高校とは言っても自分と彼との間には学年という明確な線引きがある。それに、骸のほうから近寄るつもりなど毛頭もなかった。馴れ合うつもりなどないのだ。だから彼が自分に怯えていて、近づこうとしないことは好都合だった。それが仇になるとは思ってもみなかった。 彼が骸の姿を階段に認めた瞬間。あ、という顔になって踵を返そうとするのがわかった。それはそれで構わない。問題は突然方向を転換したことで彼がバランスを崩し、階段を踏み外したことだった。身体が動いたのはとっさのことだったからと言うほかない。けれども彼はそれに責任を感じているようだった。 骸は、自分と彼という生活圏に引かれていた線がぐにゃりと歪んだような心地を覚えていた。 (お題:お題屋さん。)
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2008.08.09 Saturday
03.素敵なこと
綱吉は診察室から出てきた骸を見て、声をかけようとした口の形のまま静止した。骸は奇異なものを見るような目つきで一瞥すると、さっさと支払いを済ませて病院の外に出て行く。綱吉も慌ててあとを追った。 「骸、それ」 「ひびが入っていたようです」 恐る恐る尋ねると骸はなんてことのないように答えた。骸の右腕はギプスで固定され、首から白布で吊ってあった。 あのあと保健室に駆け込んだのだが生憎と保健医は留守だった。そこで病院まで足を伸ばしたのだったが、骸は移動の道すがら痛いなど一言も口にしなかったし、そんなそぶりも見せなかった。しかし、なんでもないような顔をして二十分近くも黙っていられるものか。それに、怪我の責任の半分は綱吉になるのに恨み言のひとつもこぼさなかった。 「……ごめん」 いたたまれなくてうつむいて謝った。骸は一瞬だけ振り返って、別に、とつぶやいた。 「きみに謝ってほしいわけではありません」 「でも、それ、痛いだろ」 「……まあ多少は」 少し間があって、ため息とともに返事がよこされた。 綱吉は弾かれたように顔を上げた。 「オレになんかできることない?」 「できること?」 「うん。右手使えないんじゃ不便だろうから、なんか……ノート取るとか宿題とか」 「きみに二年生の授業内容がわかりますか」 心底呆れたように言われてしまった。しかし確かにその通りでもある。綱吉はううんと唸って、ぽんと手を叩いた。 「生徒会の仕事とか! そういうんならオレどうせ帰宅部でなんにもやることないし手伝えるし」 言ってみて、それは素晴らしい思いつきのように感じられた。 (お題:お題屋さん。)
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2008.08.09 Saturday
02.ダイジョウブ
入学式から数日、綱吉は骸の存在をそこまで気にする必要はないのではないかという結論に至った。 同じ高校だといっても学年が違うからそもそも生活する階が違うし、それに骸は生徒会で忙しくしているだろうし、顔を合わせるほうが難しいだろう。 と思っていた。のだが。 「危な――!」 綱吉はとっさに叫んだ。階段の途中にいた骸は双色の目を大きく見開いて、動き方を忘れたようにその場に止まった。ぶつかる、と思って目を閉じた瞬間、腕を引っ張られるような感覚を覚えた。抱え込まれる。え、と思うのと同時に衝撃が来た。 ずだんっ! と鈍い音が響いて、うめくような声が耳元で聞こえる。綱吉はすぐさま身を起こした。真下には顔を苦痛に歪ませた骸がいた。 (お題:お題屋さん。)
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2008.08.08 Friday
01.オープニングの終わり
沢田綱吉は入学式のパイプ椅子の上で目を見開いて固まっていた。 (なっ……!?) 四月吉日。うららかな春のよき日に、並盛高校入学式はまさに現在進行中である。校長、来賓と常であれば長ったらしいことこの上ない祝辞は思いのほか短く、式はさくさくと進んでいた。 おかげで綱吉も入学式の初っ端から居眠りをするなどという失態をしでかすことなく、傾聴しているとは言い難いものの、パイプ椅子に座り続けていられた。 進行役の教師がまた式次第を読み上げる。 「生徒会長あいさつ」 ひとりの生徒が立ち上がって壇上に進み出た。すらりとした長身、嫌味なぐらいに整った顔、なによりその双色の瞳。 「桜の花もすっかり見頃を迎え、今や春爛漫と鳥たちもさえずる今日のこのよき日。新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます――」 すらすらと淀みなく、幾分か形式化された祝辞が読み上げられていく。聞き惚れるような耳に柔らかい低音が響き、女子がほう、とため息をつくのが聞こえた。しかし綱吉の耳には、祝辞の十分の一すら聞こえていなかった。 「在校生代表、六道骸」 とあいさつを締めくくる六道骸が並盛高校の生徒会長を務めているのは紛れもない事実であるらしく。 平穏な高校生活は、あっけなく幕を下ろしたようだった。 (お題:お題屋さん。)
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